脳梗塞

脳梗塞の原因
脳血栓:
動脈硬化によって脳の血管が閉塞したり細くなったりして、脳梗塞をつくってしまう病気です。動脈硬化は、高血圧や高コレステロール血症、糖尿病などを放置することで進んでいきます。

脳塞栓:
脳以外の場所(心臓や頸部など)でできた小さな血の固まりである「血栓」や、傷口から血管に入った空気、脂肪組織などが脳の血管を詰まらせる(「塞栓」させる)ことで脳梗塞をつくってしまう病気です。

脳梗塞   心筋梗塞

(東北厚生年金病院の例)
 
糖尿病の合併症で恐ろしいのは、脳梗塞や心筋梗塞です。脳梗塞の人の約半数の人に糖尿病がありますし、心筋梗塞の人の約三分の一の人に糖尿病があります。
脳梗塞や心筋梗塞は、脳や心臓に栄養を送っている動脈が動脈硬化を起こして、塞がってしまう結果起こるものです。
糖尿病になると動脈硬化が進行しやすくなりますし、動脈硬化を起こすと、血管の内側が凸凹になって血栓(血管の中で血液が固まったもの)ができやすくなります。そして、血栓が次第に大きくなって、ついには血流が止まって梗塞の状態になります。



 ご承知のように心筋梗塞は非常に危険な病気ですし、脳梗塞は半身麻痺になって手足や話すことが不自由になる病気です。
糖尿病と診断されたら、日頃から脳梗塞、心筋梗塞にならないように注意する必要があります。
なぜ動脈硬化が起こりやすいか
では、糖尿病になると、なぜ動脈硬化が起きやすいのでしょう。
動脈の断面を見ると、内膜、中膜、外膜の三つの層になっています。
           

一般に動脈硬化は、この内膜の部分にコレステロールが大量に取り込まれることにより起こります。

コレステロールは油ですから水に溶けません。それで血液の中では、水に溶ける蛋白質がコレステロールを包んでリポ蛋白となっています。
糖尿病ではこのリポ蛋白が酸化されたり、ぶどう糖が結合したりします。このような変化したリポ蛋白を、大食球(マクロファージ)や平滑筋細胞が積極的に取り込み、内膜内に蓄積します。このため糖尿病では、コレステロールがあまり高くなくても動脈硬化が進行するのです(右図参照)。

動脈硬化の進行(動脈断面図)


動脈硬化が進行し、
動脈の内側の瘤〈こぶ〉のようになったところが大きくなるとともに、徐々に血液の成分が付着し、血液の流れる部分を塞いでいきます(下図参照)。
その結果、十分な血液が流れないようになると、その部分から先の組織は必要な栄養分と酸素が不足して細胞が死んでしまいます。
このような状態が
脳の動脈で起きると脳梗塞、心臓の動脈で起きると心筋梗塞になります。
動脈硬化は、動脈の断面積の 90% を塞ぐようになるまではほとんど自覚症状がありません。しかしその進行状態は超音波検査などで比較的簡単に調べられますから、主治医と相談し定期的に検査を受けるように心がけましょう。



●治療・予防法

【ひとつでも減らしましょう】
ここにあげたものは、すべて脳梗塞の危険因子です。
つまり、この中に当てはまるものがあれば、あなたは脳梗塞予備軍なのです。危険因子をたくさんもっていればいるほど脳梗塞になりやすくなるので、ひとつでも危険因子を減らすように心掛けて、脳梗塞を予防しましょう。

@高脂血症
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が血管の壁にたまって動脈硬化を進めます。また、中性脂肪の値が高かったり、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が低くても動脈硬化を進めます。
A糖尿病
糖尿病は、動脈硬化を進めてしまううえ、血液がドロッとなって流れが悪くなります。その結果、血液が固まりやすくなり、血のかたまりができやすくなります。
Bたばこ
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて、細くさせてしまいます。
・動脈硬化の促進
・血液を固まりやすくする
・不整脈などの心疾患を誘発
C心疾患
心臓内で血が固まりやすくなります。この血のかたまりが血液の流れによって脳の血管をつめてしまいます。
D高血圧
動脈硬化をさらに進行させてしまいます。脳の動脈は特に高血圧の影響を受けやすいため、脳の血管はつまりやすくなります。
E肥満、運動不足
肥満は、脳梗塞の原因となる高血圧、糖尿病、高脂血症を引き起こします。特に内臓肥満が多い「りんご型肥満」の人は要注意です。
Fアルコール
飲み過ぎは危険です。アルコールはエネルギーが高いので、肥満の原因にもなります。1日1合までが適量です。
G過労、ストレス
高血圧、糖尿病、心疾患など、すべてをあっかさせる危険因子です。
H加齢
歳をとると、血管壁は固く厚くなり、動脈硬化が進行します。